※この報告書は、記事「自作の怪異でビビらせろ! 俺の 最凶SCP決定戦 - ぜろますのブログ」の関連記事です。
アイテム番号: AME-005
オブジェクトクラス: Euclid
異常保全要項: AME-005は拡張B型収容室に収容され、常時ニュートラルな状態を維持できるよう環境を調整されます。
外部との通信可能性を排除するため、収容室にはファラデー壁が取り付けられます。
2021年07月以降、監視を主目的とした調整がなされています。監視ログ及び直接観察において異状を認めた職員は、AME-005研究主任(現在:ステファニー・アルデンホフ博士、ロブ・ホフマン主任研究員)まで連絡してください。
説明: AME-005は、Apple社製、2013年製のMac Pro(以下、これをAME-005-Aと呼称します)を中心に構築されている異常な思考プラットフォームです。AME-005には外部電源の入力装置が存在せず、不明な手段で動力を維持しています。AME-005-Aへは改造されたMacintosh 512K、及びBOSE社製companion 2 series IIが接続され、それぞれ映像出力、音声出力デバイスとして割り当てられています。
CPU部には48個の豚由来とみられる脳が直列に接続されており、有機プロセッサとして機能しています。いずれも腐敗の兆候を示しておらず、高度に活動状態にあります。試験により、細菌類等が一切付着していないことが確認されています。AME-005-A内周には高度パラテック由来と考えられる未知の装置群が配置されており、AME-005に対する分解の試みに抵抗するよう機能を設計されています。
分離試験の際にはAME-005-A内部より未確認の腕状機構及びドローン様ボット群が出現し、極めて短時間で初期遭遇時点の仕様に復元しました。ファラデーケージを用いた回収の試みにより、ボット群の内2機の拿捕に成功し、現在研究中です。
AME-005は、自身が観測し問題として認識した何らかの事柄を解決するよう設計されており、また、異常な精度の高度学習能力を示しています(問題を処理しているAME-005を“ニュートラルな状態にない”と定義します)。
ニュートラルな状態にないAME-005は同時に複数の問題を処理することはできず、直前に観測した未解決の1問題のみを処理します。一見ランダムな判断基準を持ち、学術的な要素や社会的な課題を含まない事柄であった場合も、問題と見なすことがあります(実験記録0001 - 4788を参照)。言語形態に依存せず、英語や中国語、日本語をはじめ、各国言語に対応します。
AME-005は、意思疎通の試みに応答することができないか、意図的に無視しています。モニタ、スピーカは基本的に回答を提示するための出力プラットフォームとしてのみ使用され、意思を提示しません。
AME-005が現在の収容状態を問題として認識する場合、継続的な収容違反の試みが行われることになると考えられます。また、問題となる事象が存在しない場合、「問題が存在しない」という問題を解決するための作用を行う可能性が排除できないため(事案ログ: 2006/07/03参照)、継続的な問題提起の試みが行われるに至っています。
インタビューログ: 2003/02/10
質問者: ロブ・ホフマン主任研究員
回答者: AME-005
実施: 質疑応答を問題と捉えさせる狙いで、ニュートラルな状態にあるAME-005を対象としてインタビューをおこなった。
記録開始
ロブ研究員: AME-005、私の言っている言葉の意味がわかりますか?
AME-005: [回答なし]
ロブ研究員: AME-005、聞こえている場合、何か音や文字を出してもらえますか?
[68回の無効な意思疎通の試みを除去]
ロブ研究員: インタビュー終了。
記録終了
終了報告: 無意味だ。
追記: 聞こえていないか、答えるつもりがないと思われる。
事案ログ: 2006/07/03
2006/05/11よりAME-005の試験は休止され、収容室は監視業務用に調整された。2ヶ月間AME-005はいかなる出力もおこなわなかったものの、フロントパネルは常時点灯され、僅かな動作音が継続的に観測されていた。
2006/07/03正午に前触れなく付属肢体を展開し、周辺環境に干渉を試みた。異状を認めた研究員が駆けつける前に、収容室内の記録機器等を用いて未知の機器を構築。機器の一部は電力出力を賄う目的とみられ、「ヴィラール・ド・オヌクールの永久機関」に類似していた。
以上のインシデントから、AME-005は、問題がない、という状態そのものを問題と捉え、なんらかの回答を出力しようと試みた可能性が検討された。
実験記録0001 - 4788: 2003/02/11 - 2021/07/25
以下のログは、AME-005の価値判断基準を特定する目的で実施された実験群のうち有意なものをまとめたものです。
全テストログの参照を希望する職員は、AME-005ログ管理担当(現在: ベン・スコット)に問い合わせてください。
実施日: 2003/02/11
担当: ステファニー・アルデンホフ博士、ロブ・ホフマン主任研究員
手法: 文法的に成立した正当な解のある高等学校レベルの数学的文章題を与え、反応を記録する。
結果: AME-005は、平均的な回答時間の後正確な解を出力した。以降、同様の数学的文章題はいずれもクリアされるか、内容が共通する場合は無視された。
分析: AME-005は、最低限、常識的な数学に精通している。
実施日: 2003/02/11-2004/02/11
担当: ステファニー・アルデンホフ博士、ロブ・ホフマン主任研究員
手法: 現在まで未解決の数学的命題を与え、反応を記録する。
結果: AME-005は、フロントパネルに「Wait a minutes...」と出力したまま、以降全ての環境要因を無視した。
Neutralized指定を検討するため、記録機器による継続的な監視と視覚による定時観察に切り替えたところ、正確に1年の経過時間の後、ファンファーレ様の音声出力と共にフロントパネルに回答が出力されているのを観測。
財団異常数学部門による試算ではいずれも事実上の解であるものの、現在財団が有するあらゆる計算手段では断定が不能である。
以降、同様の試験では、いずれもおよそ前回の半分の時間で解を出力するようになった。現在の最短出力時間は約2分である。
分析: 興味深い結果です。AME-005は、理論が正確であり、新規性がある、と実体が認める限り、あらゆる数学的問題を解決する可能性を有するようです。この方面で掘り下げれば、現在理解されている数学に大きく寄与するでしょう。ただし、一般への情報開示は慎重になるべきと考えます。しかしながら、なぜ全く異なるアプローチを要する未解決問題を半分の試行時間で解決できるのでしょう。そこには「未解決問題である」という共通点を除けば、規則性など何もないはずです。
年月日: 2004/04/26
担当: ステファニー・アルデンホフ博士、ロブ・ホフマン主任研究員
手法: 解の存在しない数学的問題を与え、反応を記録する。
結果: AME-005は、正しい問になるよう式を修正した後、正当な手段を用いて回答をおこなった。設問の構成そのものを問題と捉えたものと思われる。
分析: 意図した結果とは異なりますが、AME-005は、可能な限り与えられた問題を解決しようと試みるようです。また、ある程度の柔軟さをもつこともわかります。
年月日: 2004/04/26
担当: ステファニー・アルデンホフ博士、ロブ・ホフマン主任研究員
手法: 解の存在しない数学的問題を与えたのち、式を改変しないよう発声し、反応を記録する。
結果: AME-005は、フロントパネルに「Wait a minutes...」と出力し、5分間応答を停止した。
5分後、式の末端に未知の記号を代入。直後に解を出力した。
記号はθ-プライムとみられたため違反アラートが発出されたが、AME-005自身を含め周辺で予想される異常が生じなかったため、24時間後解除された。
AME-005の異常性により、未知の手段でθ-プライムの侵食を妨害したものと考えられている。
分析: 我々が解くことのできない問題が存在するのは、θ-プライムを封じ込めているためだというのでしょうか。極めて興味深い結果ではあるものの、今後、同様の試験をおこなうことは認めるべきではないでしょう。少なくとも、我々があの数を収容しなければならない限りは。
年月日: 2004/05/08
担当: ステファニー・アルデンホフ博士、ロブ・ホフマン主任研究員
手法: AME-005が問題と認識する範囲を把握するため、標準的な大学入試レベルの問題を提示し、反応を記録する。言語学、物理学他、20の大学入試で出題された物の中から2800問を選出した。
結果: AME-005は、問題のカテゴリを問わず回答を出力し続けた。2622問目の回答を終えた時点で回答を拒否。残存した問いを確認したところ、いずれも何らかの点で回答済みの問題との類似がみられた。
分析: 予見された通りの結果ですが、AME-005の対応できる範囲が数学に限らないというのは、重大な脅威性と可能性を示しています。例えば、実体が現在の収容状態に問題を見出した場合。実体がどのように振る舞うかは全く未知数です。
年月日: 2008/05/08
担当: ロブ・ホフマン主任研究員
手法: 偶発的なインシデント。試験のため用意されていた書類に対し、AME-005がこれまで確認されていなかった反応を示したもの。記録機器にて記録。
結果: 積まれていた書類の束に対し、AME-005のこれまで未確認であった拡張肢体が延長。自身の相対的な形状を維持したまま、書類をよじ登るようにして移動を開始した。後に、主に腕状部位を使用し収容室内の机、椅子等を飛び回った。4周半を終えたあたりで急速に失速し、インシデント発生前の地点に正確に接地した。
分析: 動けるようです。予見しておくべきでした。しかしながら、これは収容手順に役立てられるかもしれません。こいつが飽きないよう工夫してやれば、永続的にニュートラルな状態を維持できるのではないでしょうか。
年月日: 2008/05/10
担当: ステファニー・アルデンホフ博士、ロブ・ホフマン主任研究員
手法: 前回の偶発試験を踏まえ、簡易的なアスレチックフィールドを構築。アスレチックフィールドには前回の書類を再現したブロック群の他に、雲梯や鉄棒など、肢体を要する設備を多く配置。AME-005の環境要因に対する反応を確認する。これに伴い、収容室は拡張B型収容室に変更された。
結果: AME-005は、先のインシデントから想定されていたように拡張肢体を延長。延べ65時間に渡って変速的な移動行動をおこない、簡易アスレチックを走破し続けた。最終的に、一周当たりを47秒程度で走破するようになった。4周連続で47秒の記録を残した時点で初期地点に移動。以降はアスレチックフィールドに対して反応を示さなくなった。
分析: 飽きてしまったようです。
追記: 付属肢を使っての走行は目を見張るものがあります。しかしながら、実体をニュートラルな状態に留め置く場合のリスクは高まったと言えます。先のインシデントではあくまでも周辺への干渉性能だけが明らかになりましたが、本件で自立性能を有することがわかったわけです。
年月日: 2008/06/17
担当: ステファニー・アルデンホフ博士、ロブ・ホフマン主任研究員
手法: 前回の試験を踏まえ、自動的にレイアウトが組み変わるアスレチックフィールドを構築。アスレチックフィールドには前回の書類を再現したブロック群の他に、雲梯や鉄棒など、肢体による把持を要する設備を多く配置。AME-005の環境要因に対する反応を確認する。
結果: AME-005は、想定通り拡張肢体を延長。延べ2ヶ月半に渡って変速的な移動行動をおこない、アスレチックを走破し続けた。最終的に、1周当たりを38秒程度で走破するようになった。4周連続で30±8秒の記録を残した時点で初期地点に移動。以降はアスレチックフィールドに対して反応を示さなくなった。
分析: モジュールの組み替えには限界があります。規則性を見出し、これ以上の試行は無意味であると判断されてしまったのでしょう。
年月日: 2021/07/25
担当: ステファニー・アルデンホフ博士、ロブ・ホフマン主任研究員
手法: 現在時点で最新の試験。職員の息子が保有している書籍「イジワルじいさんのナゾナゾ大全3」(日本国内刊行分。ISBN████████)の問題文を与え、いわゆるなぞなぞを処理できるか観察し、記録する。
結果: 回答を出力したが、内容が書籍の模範回答と異なっていたため、研究員が反射的に「違う」と発言。直後フロントパネルに「Wait a minutes...」と表示したまま応答を停止。現在まで回答を出力していない。
分析: これは一体どういうことだ?
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